気仙沼は、日本有数の港町である世界三大漁場の一つである三陸沖の主な水揚漁港で、カツオやサンマを初め、近海マグロやメカジキまで、様々な魚が揚がる漁師の町です。
東日本大震災から約6年がたち、気仙沼では新たな地域の魅力の発信に連続日本一の漁獲量を誇る「メカジキ」のブランド化に取り組んでいます。
メカジキは、地元の人たちにとって昔から身近で、特別な海の味覚です。刺身でも美味しいメカジキですが、メカしゃぶ(メカジキのしゃぶしゃぶ)、メカすき(メカジキのすき焼き)メカカレーなど新たな気仙沼グルメが広がっています。
「とろとろさんまとフカヒレとゆずの味噌煮」(石渡商店×三国清三シェフ×橘裕二シェフ)
「みなと気仙沼大使」でもある三国氏が考えたのは“さんまの味噌煮”。そこに柚子の香りを加えたら……というものでした。橘氏が思いついたのは日本の柚子生息の北限である気仙沼の「大島ゆず」をコンフィにして甘い香りを味噌に引き出すこと。さらに橘氏はさんまの頭を炒めて煮詰め、味噌を加え漉すことを提案して、“スープ・ド・ポワソン”(フランス風魚のスープ)のような濃厚な仕上がりになりました。こだわりはそれだけではありません。さんまの表面を焼い香ばしさをプラス。原料をすべて缶詰に詰めてから加熱する通常の製造法では考えられない手法、新たなチャレンジでした。そして極めつけはフカヒレ!
「気仙沼が世界に誇るフカヒレを小さくてもそのままの形で楽しんでいただきたい」という缶詰メーカー石渡商店さんの熱意の現れです。“気仙沼オールスターズ缶”とも呼ばれるこれまでにないユニークなこの缶詰は、そのままで、または丼やうどんのトッピングとしてもお楽しみいただけます。
「気仙沼産メカジキの地中海風煮込み」
(石渡商店×ステファノ ダル モーロシェフ×廣瀬竜一シェフ)
「こんなすばらしいメカジキ、今まで日本で見たことがありません。日本人の知らない知らないイタリア人の好きな食べ方で缶詰にしたい。」アンティカ・オステリア・デル・ポンテのステファノシェフが港で出合ったのは日本で一番の水揚げ量を誇る立派なメカジキでした。ステファノシェフとタッグを組んだ宮城県の廣瀬シェフ(リストランテダ・ルイジ)もイタリアで9年間修業をした経験があります。二人で並んでメカジキを眺めながら頭に浮かんだのは偶然にも同じレシピでした。それはケッパーとオリーブ、トマトを使う王道の組み合わせ。南イタリアでは特にポピュラーなメカジキ料理です。目を閉じて缶を開ければイタリアにいるような……そんな本格的な風味の一品料理に仕上がりました。
「気仙沼産フカ肉入りオマール海老のビスク~濃厚豆乳とオイスターソースの深いコク~」
(石渡商店×ドミニク コルビシェフ×佐藤克彦シェフ)
フカヒレ生産量日本一の気仙沼。高タンパクで低脂肪、コラーゲンたっぷりのサメ肉(※1)は高級なはんぺんの材料となります。しかしそれだけではもったいない、知られざるサメ肉の美味しさにもっと光を当てたい!コルビ氏は魚介の出汁をペースにオマール海老のビスクを作り、繊細なサメ肉の味わいを引き立てようと思いつきました。サメ肉の切り身と団子は、試作を重ねながら加熱を工夫して柔らかく仕上げ、さらに看板商品のヒット商品「完熟オイスターソース」、豆乳クリームを加えてうま味とコクを深めました。通常の缶詰より2倍の手間をかけたリッチな味わい、銘品の誕生です。
※1)現地ではサメの肉のことを「フカ肉」と呼び、主にモウカザメ、ヨシキリザメの肉を指す。
株式会社石渡商店 専務取締役 石渡久師
気仙沼を代表する産品の味や食感、コクなどをひとつひとつ最大限に引き出し、一缶にまとめ上げるために試行錯誤を重ね、シェフの方々に御指導いただきながら商品化まで辿りつきました。
シェフの皆様の妥協を許さない食に対する強い思いや、拘りを感じながら取り組みさせて頂き食に携わる真髄を本商品開発を通じて学ばせていただきました。
三國清三 mikuni MARUNOUCHI オーナー
10年以上前から、東北各地で活躍するシェフたちと、フランス料理の活性化、技術向上を目的とした勉強会を重ねてきました。また、私自身が宮城県気仙沼市の「みなと気仙沼大使」でもあるので、東日本大震災が発生した時、真っ先に頭に浮かんだのは地元の友人たちの顔でした。震災をきっかけに、もう一度、東北の「食」に注目が集まり、プロだけでなく消費者にもその素晴らしさが伝わればと思っています。東北は日本の貴重な食材基地であり、日本の自給率を支える生命線です。
東日本大震災以降、私は「恕じょ」という一文字を座右の銘にしています。これは、人を思いやる。人を許すという意味です。私たちは、無意識のうちに「被災地」とか「被災者」という言葉を使ってしまいます。けれども本当は逆なんですね。私たちが勇気をもらっているんです。私は、震災を乗り越えようと奮闘する人々の「東北魂」に触れる度に、いつも刺激を受けています。